2026.03.30:
介護系SUインタビュー|株式会社Rehab for JAPAN様【企画編】

このたび、介護テクノロジー領域で先進的な取り組みを進める株式会社Rehab for JAPAN様にインタビューを行いました。
本インタビュー記事は「企画編」
「開発編」
「販売編」
の三部構成でお届けします。まずはこちらの「企画編」からご覧ください。
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株式会社Rehab for JAPAN 代表取締役社長CEO 大久保亮様
介護・リハビリ分野に特化したデジタルソリューションを提供するヘルステック企業。2016年創業。デイサービス向け科学的介護ソフト『Rehab Cloud』を開発。その後、施設経営支援ソフトなどをマルチ展開し、累計導入事業所数は3,870事業所に導入。AIとデータを活用し、介護現場の負担軽減と質の高いリハビリ支援、施設運営業務の効率化を実現。大久保氏は作業療法士としてリハビリ現場で働いていた経歴をもつ。
介護系スタートアップ支援事業powered by CARISOサポーターとして活動し、介護系スタートアップの相談対応等にも取り組む。
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- 介護テクノロジー(介護テック)業界で起業した理由を教えてください
- 介護テック業界特有の課題は? どのように乗り越えましたか?
- 企画の期間や、企画段階で“現場の声”をどの程度取り入れたのか教えてください
- 提供している製品・サービスはどのように生まれましたか?
- 資金調達の手法やコツを教えてください
- 資金調達先との出会いは?
私は作業療法士として、様々なリハビリの現場に携わってきました。現場で働く中で介護業界の“働く仕組み”そのものを、良くしていきたいという気持ちを特に強く感じていました。同時に、個々の工夫や努力だけでは解決できない構造的な課題があることも理解していました。現場を支える側としてではなく、仕組みそのものをより良く変える立場で介護に関わりたい。その思いから起業に至りました。
個人的な動機としては、「誰もやったことのないことに挑戦したい」という思いもありました。現場への理解と、自分なりの専門性を掛け合わせて、新しい価値を生み出したい。その思いが、事業の出発点になっています。
介護テック業界特有のもっとも大きな課題は、介護報酬改定という制度の存在です。介護や医療の領域は、いわゆるフリーマーケットではなく、国の制度設計に強く影響を受けています。制度の改定や業界動向にどれだけアジャストできるかが、事業を進めるうえで非常に重要になります。
もう一つの課題は、介護事業者の構造的な利益率の低さです。高価なプロダクトの導入は受け入れられにくいのが現状です。介護テック企業は開発コストと価格設定、そして販売形態の設計で非常にシビアな判断が求められます。私たちの場合はサブスクリプションモデルを採用していますが、販売方法も含めて最初から事業として成立する形を考えなければならないと感じていました。
そして、スタートアップという文脈で特に重要なことは、「誰がつくり、誰が売るのか」という点です。介護テックは、創業初期においては、経営者自身が“売る人”になるケースがほとんどです。その時に、プロダクトの特性にもよりますが、売る側が介護業界のことを理解していないと、介護事業者にはなかなか受け入れてもらえません。一方で、「この人は同じ業界の仲間だ」「本気でこの課題に向き合っている」と感じてもらえると、たとえプロダクトが発展途上であっても、「一緒に頑張ろう」と言ってもらえることがあります。
だからこそ、創業初期から意識していたのは、「自分がなぜこの業界に課題を感じたのか、どんな未来を実現したいのか」を、言葉にして伝えることでした。ストーリーを通じて、課題意識を共有することは、立ち上げ期において重要な要素だったと感じています。
プロダクトの企画は、どれだけ短く見積もっても最初の段階で半年程度は必要だと思います。課題特定や要件定義から始まり、最初のミニマム・バイアブル・プロダクト(MVP)をつくってリリースするまでを考えると、それくらいの時間はどうしてもかかります。また、コスト面で言えば、規模の小さいプロダクトであっても、初期段階で3,000万円前後は必要になるのではないでしょうか。
企画の進め方については、一般的に言われる「企画/開発 → 販売」という流れだけが正解だとは思っていません。むしろ、「販売 → 企画/開発」という逆のアプローチもあり得ると考えています。特に、医療や介護の現場出身の創業者の場合、どうしても“医療従事者の視点”から抜けきれないことがあります。介護や医療の現場の方々は、とても真面目で優しい人が多く、「あったらいいね」という声をたくさんかけてくださいます。その結果として、「あったらいいけれど、実際には買われないもの」をつくってしまうケースも少なくありません。本当に重要なのは、「それが実際に買われるのかどうか」を早い段階で確かめることだと思っています。コンセプトやモックアップの段階でも、どのくらいの価格ならお金を払ってもらえるのか、導入したいと思ってもらえるのか、その検証自体が、プルーフ・オブ・コンセプト(PoC)だと考えています。
当社では今でも新しいソリューションを企画する際に、まずは「売りに行く」ことをしています。現場の声を聞くことは大切ですが、それと同時に、現場が本当に対価を払う意思があるのかを確かめる。この順番を、今でも大切にしています。ちなみに、プロダクト・マーケット・フィット(PMF)を判断する際には、いわゆる教科書的な考え方ではありますが、私はまずプライシングフィットやプロブレム・ソリューション・フィットを強く意識しています。課題となっていて、本当にお客様が困られているのか、そしてその解決に対して、実際にお金を払ってもらえるのか。そこが噛み合ってはじめて、プロダクトとして次のフェーズに進めると考えています。
『リハプラン』が生まれた背景には、かなり強い競合意識があります。
介護ソフトウェアの領域には、多くの競合がひしめいています。そこで私たちは、全領域的な介護ソフトではなく、「リハビリテーション」という領域に絞って事業をスタートしました。まずはリハビリ領域のソフトウェアで価値を出し、そこからプロダクトを徐々にマルチ化していく。この攻め方を一貫して取ってきたことが、現在のサービスにつながっています。
開発過程では、私自身の現場体験と、現場から集めた声を重ね合わせながら、「本当の課題は何か」を徹底的に考えてきました。プロブレム・ソリューション・フィットを意識しながら、表に出ている要望の奥にある課題を特定していく。この初動の攻め方こそが、売れるプロダクトが生まれるかどうかを左右する重要なポイントだと感じています。
私たちは創業当初より、VCによる出資を視野に入れ、資本政策を組み立てたうえで事業を進めてきました。創業初期からVCに入ってもらう形を選んだ、というのが特徴だと思います。
また、『リハプラン』を開発した際には、日本政策金融公庫の国民生活事業から融資も受けました。エクイティとデットの両方を使いながら資金を確保してきた形で、すでに返済は完了しています。
資金調達を進めるにあたり、私が特に重要だと感じる点が2つあります。
1つ目は、資本政策です。株式は一度出してしまうと、後から取り消すことができません。どのタイミングで、どのバリュエーションで、どれくらいの株式を出すのか。この設計は、創業初期から慎重に考える必要があります。
2つ目は、最初からお金を集めすぎないことです。調達できるからといって必要以上に資金を入れてしまうと、後々の選択肢を狭めてしまうことがあります。創業初期は、まずは検証に必要な分の資金を確保すくらいが現実的だと考えています。
では、それをどう実現するのかというと、やはりトラクションに尽きます。企画や開発だけの段階ではトラクションは生まれませんし、それではバリュエーションもつきにくい。シリアルアントレプレナーのような起業家でない限り、コンセプトだけで資金を集めるのは、現在の環境ではかなり難しくなっていると思います。資金調達環境は以前よりも厳しくなっています。だからこそ、実際に売れている状態をつくっておくことが、結果的に最も確実な資金調達につながると強く感じているところです。
最初はVCの問い合わせフォームから直接アプローチするところから始めました。現在であれば、SNSなどを通じて発信し、周知するほうが現実的だと思います。
一方で、VCとの関係づくりは、1社でも入ってくれれば、そこから一気に広がるという側面があります。VCはそれぞれ強いネットワークを持っており、事業の内容や成長性が評価されれば、他のVCを次々と紹介してくれます。1回の資金調達で、何十社ものVCと話すこともあります。
これから起業する方や起業して間もない方であれば、起業家仲間とのつながりは非常に重要だと思います。私自身も、相談を受けた起業家をVCに紹介することは今でもあります。起業家同士のネットワークからVCにつながるケースは珍しくありません。最初の一歩は、SNSでも人づてでも構いませんが、事業が前に進み始めれば、VCとの出会いは自然と広がっていくと感じています。
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